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国家公務員×教育系一般社団法人の「パラレルキャリア」の実態とは!? ~新しい”生き方・働き方”を実践した5年間を振り返る~

こんにちは!Unicul Laboratory共同代表理事の永野です。
今回は、私が国家公務員との「パラレルキャリア」としてUnicul Laboratoyに関わってきた5年間を振り返り、どんな思いで活動しているか、実際どのように本業と活動を両立しているのか、パラレルキャリアにはどんなメリット・デメリットがあるのかについて、書かせていただきました。
このコラムを通じ、「仕事以外で何かやってみようかな…」と考え始めていた方や、「少し生き方・働き方を変えてみたいな」と思っていらっしゃる方を、何らか後押しできると嬉しいです。

目次

1.なぜ国家公務員×教育系一般社団法人の「パラレルキャリア」になったのか

2.国家公務員×教育系一般社団法人パラレルキャリアの実態

3.パラレルキャリアのメリット・デメリット

4.まとめ

1.なぜ国家公務員×教育系一般社団法人の「パラレルキャリア」になったのか

1991年札幌生まれの札幌育ち。高校卒業後、1年間の浪人生活の末、第二志望の大学へ進学することになり上京。しかし、どうしても第一志望を諦めきれず再受験の道を選択し、念願叶い、2012年に東京大学へ入学しました。

Unicul Laboratoryで活動を始めたのは、二度目の大学1年生の春休みの2013年2月。創設者で当時大学院生だった長尾に誘われたことがきっかけです。「キャリア教育?ってなんだ?」くらいの感覚でしたが、「とにかくワークショップ作りを実践できる場が欲しい」という下心から、参画することに。中高生のためのキャリア教育プログラム<Queque>を立ち上げることになりました。

大学2年生はほとんどUniculの活動に費やし、その後も学業や就職活動、他の課外活動との絡みでコミットに濃淡はありましたが、ずっと活動に携わっていました。

自分たちで作ったワークショップを持っていき、「いいね!」と言ってもらい、実施させてもらい、そのうちにメンバーも実施先も増えて…というサイクルは、まさにベンチャー企業の立ち上げさながらで、夢中になってのめりこみました。

▲2013年11月(立ち上げから約半年)、学芸大附属高校で実施したWSでの1コマ。

そして、通常の部活やサークル同様、大学を卒業すれば同時に団体も卒業…になるかと思いきや、ここからが違います。

2015年4月、私より1年早く社会人になった共同代表理事の丸谷が、「半年は一旦Uniculを離れるけど、半年後にまた考えたい」として、残した言葉があります。

「社会人になった4月1日に、急に教育への興味関心が消えるわけじゃない」

この言葉は、当時就職活動中の私の心に鋭く刺さりました。

仕事としては、国家公務員を志望していました。

Uniculをはじめ、非営利セクターの活動を多く見てきた私は、「社会に役に立つことをしているのに、みんな『人が足りない、お金が足りない』と言っている。どうしたら、社会に良いことをしている人たちに、きちんと資源が分配されるようになるのだろう?」という問題意識を持っていました。その課題を紐解いていくための入口として、国家公務員という仕事を魅力的に感じていました。

一方で、教育に関わりたいという思いも捨てきれていませんでした。

これからの社会では、キャリアに限らず「自ら考え、主体的に行動していく力」が重要で、そうした力を育むことに携わる道に進むことも魅力的であり、教育・人材系の企業や非営利組織で働くことも考えました。

しかし、教育の現場や非営利組織の立場からできることが限られているということも、Uniculでの活動などを通じてよくわかっていました。

結局、丸谷の言葉に引きずられるように、自然と「仕事では、マクロな視点から物事を考えて、社会をよりよくすることに取り組んでいきたい。教育にはUniculを通じて関わっていければよい」と考えるようになり、「マクロな現場とミクロな現場をつなぐ」ことを目指し、国家公務員とUniculのパラレルキャリアを志すことになりました。

そこで、大学4年生の秋から、立ち上げメンバーで先に卒業した丸谷や森と、自分はまだ社会人にもなっていないのに「Unicul社会人チーム」をつくり、「教育飲み」企画を開始。

働き始めてからも、休日や長期休暇の企画なら実施できると踏み、自分の出身地・札幌でのサマープログラムを企てるなど(集客がふるわず、ボツになってしまったけど…)、旺盛な活動を続けていました。

こうして私は、「副業・兼業」「パラレルキャリア」という言葉がメジャーになる一歩手前くらいの時期に、ほとんど自然な流れで「パラレルキャリア」としてのキャリアを歩み始めたのでした。

2.国家公務員×教育系一般社団法人パラレルキャリアの実態

と、自分の選択をかっこよくまとめてみたものの、実践してみるとそれはそれなりに大変です。

学生時代は比較的時間が自由に使えたので、平日・休日や時間帯を問わず、勉強やアルバイトなどの合間を見て細かいタスクをこなしたり、まとまった時間が必要そうであれば、「今日は〇〇の作業をする日」として、スケジュールを調整して時間を確保していました。

しかし、社会人になれば、当然そうはいきません。

平日の主戦場は朝の出勤前と通勤時間、昼休み、そして退勤後。こなせるのは、slackでの連絡やメールの返信、簡単な作業が限度です。

とくに、丸谷もですが、終電まで働くことはざら…という仕事ですので、退勤後に時間が取れないことの方が多いですし、週の後半になると、退勤後のみならず、全般的に気力が低下。笑

そして迎えた土曜の朝、一週間分のslackを見返しながら返信をすることから始まり、休日の中でまとまった時間を作って、ミーティングをしたり、作業をしたりすることになります。

このように、団体内の活動であれば、作業ペースやミーティングの時間をある程度柔軟に調整できますが、一方で、ワークショップの現場になると事情は異なります。

ワークショップ当日は、なるべく休日に重なるよう調整しますが、学校での現場は平日になることも少なくありません。また、遠方だと前泊・後泊が必要になることも…。

その際は、仕事に差し支えない範囲で休暇を取るよう調整していくことになります。

調整する際は、忙しい時期を避けることはマストですが、そうでなくても、早めに「その日は休みたい」と滲み出し、仕事を調整していきます。

現在のところ、周囲の理解や協力で、休暇が取れない、ということはあまりなく、大変有難い限りです。

なお、そのような場合、周囲は休暇を取っているという認識ですが、当人は休暇とはいえUniculの活動をやっていますので、まったく「お休み」感はありません。

とくにワークショップを実施する場合は、体力を相当使うので、休暇なのにむしろ疲弊して職場復帰することもしばしばです。笑

(とくに、伊那谷みらいスクール2018の企画段階の伊那谷訪問で、朝4時伊那発のバスで東京へ戻りそのまま出勤したとき(丸谷と私の間では「エクストリーム出勤」として有名)、2019年会津若松市グローバル人材育成事業の日曜24時東京着からの翌朝出勤をしたとき、が楽しくも辛かった気がします…)

▲2018年5月、「エクストリーム出勤」の出発点となった早朝4時の伊那バスターミナル

そんな感じで、ぶっちゃけ大変です。

「よくやってるよね」とときどき言っていただきますが、自分でもよくやっているよなあ、と思います。笑

では、なぜそんな大変なのに続けているのか?ということですが、次のセクションで書かせていただく「メリット」と被る点は一旦割愛するとして、続け「られ」ている理由、に近いのかもしれませんが、一つだけ挙げておくと…。

これは「運が良かった」としか言いようにないのですが、Uniculは自分たちが大学生時代から活動している団体だったから、というのは大きな理由の一つだと思います。

具体的には、気心が知れたメンバーと、気を遣わず、自分のペースで活動ができた、ということが大きいように思います。

こういった表現が適切かは分からないのですが、「コミュニケーションコストが非常に低い」ということかもしれません。

仮にUnicul以外で新しくプロボノ的な活動を始めようとすれば、

・どんな団体なのか、どんな人がいるのか、一から雰囲気をつかむ

・団体の歴史、現在の事業、使っているツール、活動スタイル、などなど、あらゆることをキャッチアップする

・その上で、自分の出せる価値を発揮していく

といったことが必要になってきます。

これらは大変な作業で、たとえば入ったばかりで急に仕事が忙しくなってしまったりすれば、上手く活動の波に乗れない可能性もあると思います。

(逆に、Uniculに入ってきてくださる社会人の方は、こんなまだ内部が整っていない団体なのに上記のプロセスをきちんと経て定着していらっしゃって、尊敬の念しかありません…)

そういう意味で、私の場合は、割ける時間が多くないながらも、パラレルキャリアを実践しやすい環境が整っていた、ということに尽きると思います。

その上で「自分たちが作ってきた事業と団体を、このまま潰すわけにはいかない」という「気合い」が支えの一つであったことも事実かもしれません。

3.メリット・デメリット

前セクションでお話しした「なぜ続けているのか」の理由は、シンプルに表せば「楽しい!」の一言に尽きるのですが、そこを少し掘り下げて、私が感じているパラレルキャリアのメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。

<メリット>

・いろいろな人と関わり、一緒に活動ができる

以前、Uniculのnoteにも書いたことがありますが、Uniculのメンバーは年代も本職もバックグラウンドも様々です。

大学生の考えていることが新鮮で面白かったり、他業種の社会人のスキルや考え方に学ぶことが多かったりと、刺激になることばかりです。

仕事だけをしていると、視野が狭まってしまう部分があるので、こういった場には大いに助けられます。

また、「多様な人と働く」ってどういうことだろう、というのを、身をもって体験できるので、普段の仕事の仕方への影響も大きいです(とくに、新入職員さんとの関わり方とか…)。

・本職ではできないことができる、挑戦できる

そもそも自分の本職は教育にはあまり関わらないことが多いので、Uniculという場を通じて教育の領域に携われるということは、本当に有難いことです。

また、団体内でのポジションも、複数兼務してもOKですし、本職での経験がない活動にも取り組むことができます。

たとえば、私は最近は人事チームに所属しています。採用を担当したり、メンター・サポーター制度をつくったり、という活動をしています。

本職では、これまでそういった仕事はしていませんし、今後もそういった機会があるかどうかは分からないのですが、人事には興味があるので、Uniculでそういった活動に関われるのはとても貴重です。

・「現場」に近い活動ができる

私の本職は、社会の様々な制度をつくったり、その制度を実施につなげていくことです。

つくった制度がどのように実施されているか、それがどのように人々の生活に影響を与えているかについては、常に関心事なのですが、「マクロな現場」としての霞が関からはなかなか見えてこない部分もあります。

他方で、Uniculの活動は学校や地域といった「ミクロな現場」で行うものです。

ワークショップの企画・運営をする中で学ぶこともたくさんありますが、たとえば学校のICT化がどれくらい進んでいるかとか、地域が人口流出とどう戦っているかとか、ワークショップ以外にも様々なことを肌身で感じます。

1でも書かせてもらいましたが、私は「マクロな現場とミクロな現場をつなぐ」ことを目指し、国家公務員と教育系一般社団法人のパラレルキャリアという進路を選択しました。

私は、「Unicul Laboratory」という肩書で様々な現場に飛び込み、ワークショップを実施しながらも、傍らで、私たちがつくっている政策は本当に機能しているのか、国家公務員として考えるべきこと・やるべきことは何かについて、常に考えさせられています。

・本職に活かせる

そして当然、上記は本職に活きてきます。

Uniculで得た知識や経験が直接的に活きる場合もあれば、自分の仕事を相対化して見てみたり、人とは異なる角度から物事を見られたりと、間接的に活きる場合もあります。

また、本職で自信を無くしたときに、Uniculのタスクをこなすことで少し復活することもあるので笑、そういった効果もあるのかもしれません。

・本職ではあまり使わないツールを試したり、習熟することができる

slackやgoogle driveなど、本職ではまだ縁遠いようなのですが汗、民間では広く普及しているツールを試したり、習熟することができます。

上記に関連しますが、とくにzoomやmeetなどのオンライン会議用のツールは、Uniculで使ったことがあって本当に良かったと、コロナ禍で思いました…。

・「居場所」になる

今度はコロナ禍に関連して、ここ1年くらいで強く感じたことですが、家族でもない、職場でもない、「第三の場所」があることは、非常に重要だと思います。

Unicul自身が「居場所」を提供することを目的としているわけではないですが、ビジョン・ミッション・バリューを共有し、共通の目標に向かって一緒に活動する中で、互いに何かあったときに集まれる、率直な気持ちを共有できる、そういった関係性を築いていける、というのは嬉しいことだなと思います。

また、私はこれを書いている今、派遣留学の機会をいただきアメリカに来たばかりなのですが、環境が大きく変化する中で「いつも通りの、変わらない場所」があることの有難みを感じているような気がします。

アメリカにいるけれど、Uniculで活動しているという点については、日本にいるときと何も変わっておらず笑、その変わらなさがある種の安心感につながっているように思います。

▲2019年12月、全体ミーティングでの写真。Uniculを通じて出会った人は数えきれないほどです。

<デメリット>

・本職ならすぐにできそうなことに、数倍の時間がかかる

パラレルキャリアであることの裏返しですが、平日・休日ともに活動や作業の時間が細切れになってしまうので、本職でインテンシブに週単位・月単位で取り組めば達成できそうなことに数倍の時間がかかります。

とくに「組織づくり」という点では、非常に苦労してきましたし、現在でもそれは変わりません。団体が立ち上がってからは既に10年近く、法人化してからも3年以上たちますが、恥ずかしいながら、なかなか進まない部分が多いです。

パパっと組織に分けて、必要なシステムを作り、回してみて…というところが、言い訳がましい部分もありますが、片手間だと機動的にできない部分が多いです。

・本職とのバランス

上記及び下記と関連することですが、当然本職をきちんと務めてのUniculの活動ではあり…。

Uniculに時間を割きすぎて、本職をおろそかにすることはできないし、そういう意味で、Uniculに使う時間を捻出できないタイミングがあります。

結果として、Uniculでの活動が不完全燃焼になり、辛いな、悔しいな、と思うことも、ときたまあります。

・時間と体力

当たり前のことですが、時間は確実に削られます。平日も休日も、無限に割かれます。笑

仮に休日にミーティングを4つハシゴしてしまうと、それだけで1日が終わります(実際の話です)。

家族・恋人・友人との時間、趣味の時間、勉強の時間など、プライベートとの両立は常に課題です。

そして、当然体力の問題もあります。

身体的な問題もありますし、もちろんUniculでの活動もすべてがスムーズに行くわけではないので、精神的にちょっと体力を削られることもあります。

他のデメリットとしては、お金がかかる(無報酬なので…)、周囲の理解を得づらい場合がある、といったことも挙げられますが…ここでは省略してしまおうと思います。

4.まとめ

さて、ここまで相当なスペースを割いて、なぜパラレルキャリアの道を選んだか、実際にやってみてどうか、メリット・デメリット…とお話してきました。

最後、この記事を通して伝えたいことをシンプルに言えば、

「もっと、こういう生き方・働き方が、メジャーになったらいいのに!」

ということです。

丸谷や私が「働きながらUniculを続ける」という選択をしたときは、ロールモデルもさほど多くなく、本当にそんなことできるのか?と、自分たちも半信半疑でのスタートでした。

そこから5年以上たって、「副業・兼業」「パラレルキャリア」という言葉がメジャーになりましたが、まだまだこういう生き方・働き方にチャレンジする人は多くはないですし、興味を持っていても踏み出せない人が多くいるように思います。

しかし、有難いことに、こういう背中を見てくれている人がいるということに、最近気づきました。

Uniculで、学生時代から関わってくれていて、今年から社会人になったメンバーと話したときに、つい「でも、なんで社会人になってからも続けようと思ったの?」と聞いてしまいました。

すると、

「辞めるということをあまり考えませんでした。だって丸谷さんや永野さんみたいなロールモデルがいるじゃないですか!」

と言われました。

「え?あ?そ、そうか…」とその場ではあまり実感が沸かなかったのですが、どうやら自分たちがロールモデルになっているらしい、と気づきました。

これまでお話しした通り、パラレルキャリアは大変です。

全員に勧められるわけではないと思います。

でも、大変であること以上に、得られるものは大きいです。

自分自身は、国家公務員でありながら、教育系の一般社団法人を運営するという経験ができて、とても良かったと思っています。

「仕事以外で何かやってみようかな…」と考え始めていた方や、「こんな生き方・働き方もあるんだ!」と思ってくださった方、ぜひ一歩を踏み出してみてください!

(Unicul Laboratoryでも、現在秋採用を実施していますので、興味を持たれた方はぜひご応募ください!)

▲2019年会津グローバル人材育成事業最終回の集合写真。本業の合間を縫って、ワークショップを作って、高校生に届けて、とても充実した時間となりました!

(執筆/永野あきほ