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【参加者インタビュー:大宮国際中等教育学校】ワークショップを通して見えてきた自分の気持ち。

Unicul Laboratoryのプログラムに参加してくださった中学生・高校生の皆さんにインタビュー!

今回は、さいたま市立大宮国際中等教育学校の皆さんにお話を伺いました! 

さいたま市立大宮国際中等教育学校

2019年に開校し、関東圏の公立学校として初めて、国際バカロレア(IB)機構からMYP(Middle Years Program)とDP(Diploma Program)の認定を受けた学校です。さいたま市の教育方針である3つのG、Grit(グリット)、Growth(グロウス)、Global(グローバル)を校訓として、これまでにない様々な形で探究的な学びを実践しています。

Unicul Laboratoryでは、2020年度より同校で開講されているLDT(※)の時間に、中高生向けキャリア教育プログラム<Queque>のワークショップを実施させていただいています。

(※)LDT(Learner Directed Time)
土曜日に隔週で行われる自分で自分の学習をプロデュースする時間。

https://www.city-saitama.ed.jp/ohmiyakokusai-h/education.html

2022年度は9月~12月に計5回のワークショップを開催しました。
今回、ワークショップ参加者を代表する形で中学2年生の今井さん、大嶋さん、和田さんの3人に受講時の感想を伺うとともに、どのような気付きや学びがあったのかを教えていただきました。

(インタビューは2022年12月末に実施しました。学年等は実施当時の内容です。)

Q1.参加したワークショップで印象に残っているプログラムはありますか?

今井:僕は4回目(2022年度第4回)にやった”自分クッキング“が印象に残っています。

おじいさん(神様)が持っている器の中に自分の特徴をひとつずつ入れていって、最終的に出来上がった自分自身について発表しました。実際に自分が持っているたくさんの要素の中から、いくつか絞って言語化する作業がすごく難しかったなと思ったので、印象に残っていました。

Unicul: そのとき、どんな自分をイメージしながら作っていたのですか?

今井: いまの自分自身についてなんとか考えて要素を探していくとなると、客観的に見にくくて、やりづらいなあと感じていました。取っ掛かりがないままだとワークが進めにくかったので、2~3年前くらいの自分がどうだったかを思い出しながら、いまの自分の方に当てはめてみようと思いました。この要素は昔もいまも同じかな?と考えながら、書き出して作っていきました。

Unicul: 昔と現在の自分を比較して、共通していそうな要素を書き出すことから始めたのですね。やってみて、キーワードは見つかりましたか?

今井:色々見つかりました。僕はこれまでに引っ越しを何回か経験していて、環境が変わるうちに僕の人間性も変わってきたんじゃないか?と考えていたんです。引っ越しというキーワードをきっかけに、さらに自分を深堀りする段取りを考えながら、自分クッキングのワークを完成させることができました。時間がちょっとオーバーしちゃいましたけど。

今井: 普段の自分は、自分自身のことより、周りのことを見ている気がします。例えば、自分がやっている勉強とかテストの内容、遊びに出掛けた時の出来事について。自分にフォーカスを当てたことはそんなになかった。思ったほどには、自分で自分のことをあまり理解していないことがワークを通してわかってきました。自分の内面を振り返るのは意外と難しかったです。
しばらく時間が経ってから自分クッキングをやり直すと、そこでは思ってもいないようなことに気付いたり、自分の新しい要素がわかったりするのかもしれないです。

Unicul:ありがとうございます。次に、大嶋さんはどうでしたか?

大嶋:私は一番最後(2022年度第5回)にやった、”無人島クエスト“が印象に残っています。

大嶋: 付箋に目標を書き出していって、その付箋を順番に貼っていくと将来の夢に繋がる道が完成するというワークをやりました。やりたいことは浮かんでも、いまの時点から未来の時点までの途中経過の部分について具体的に考えたことがなかったんですけど、ワークショップでそこを具体的に考えることができて、さらに他の人の意見やアドバイスも追加しながら深く考えることができました。
「ここのステップに目標を追加しよう」という意見を周りの方にいただけて、自分の夢をこれからどうやって叶えていくか?そんなことを勉強した回だったと思います。

Unicul:目標達成までのプロセスについて考えられる時間がたくさんあったんですね。他の参加者の皆さんやファシリテーターからは、どんな意見をもらいましたか?

大嶋:将来やりたいことのために、今どんなことが必要なのかを教えてもらいました。 私は、世界中でいろんな苦労をして暮らしている方や、金銭面、生活面で大変な思いをされている方に、自分が学んでいる英語や大好きな音楽のこと、豊かな文化を教えられる人になりたいと考えています。
大人になるまでの途中経過で何ができるかを考えたとき、塾の先生のアルバイトをしてみるのはどうだろう?という提案をもらいました。先生のサポートを行うアルバイトがあるなら、それもやってみたらどうかって。

あとは、国際的に活動できるUnicefに入るとしたら、そこで活躍するためには他にどんな勉強をすればよさそうか。テストも受けてクリアしないといけないねって意見もありました。そんな具体的なところまで自分ではあまり調べられていなかったし、詳しく教えていただきました。

Unicul:ありがとうございます。では、和田さんお願いします。

和田:私も大嶋さんと同じで「無人島クエスト」が一番心に残ったワークショップかなって思っています。(大嶋さんとは同じグループでした)
班のみんなとコミュニケーションを取っていく中で、やりたいこと、そのためにやらなければいけないこと、私が大学生になる頃には時代がどう変わっているのか、そういう点も合わせて考えておく必要があるんだなって思いました。いつ頃に何をすると良いのか…その重要さを話し合えたので、よかったです。

Unicul:和田さんは、将来やりたいことがあるのですね。

和田:将来はCA(客室乗務員)になりたいです。 数年後に就職活動をして航空会社に入社するとなった場合に、仮にその時点でCAになれなかったらどうしたらいいのか。どこかでステップを間違えてしまったらどうするか。その時にどのように対応して良い方向に戻していくか。そんなことをワークショップ中に考えていました。
もし、自分にとってあまり良くない出来事が起きたときに、どんな影響が出そうか。Uniculのファシリテーターの方と一緒に考えたことで、臨機応変に対応して行動していくことって大事なんだな、と感じました。一度決めたステップでも、その時の状況に合わせて変えていく方が良い結果になりそうだって。

Unicul:そのときの場面や状況に応じて対処することが、和田さんは必要だと感じたんですね。

和田:はい。CAの試験は倍率が高くて難しくて、訓練も厳しいし、過酷な道のりかもしれないですけど、チャレンジしたいです。何度も試験を受けてダメだったら…ダメだったとしても、それでも空港に関わる仕事は自分的に外せない条件なので、CAではないけれど空港関係の職種に範囲を広げて探してもいいかもしれない。そんな風に少しだけ柔軟に考えられるようになりました。

Q2:ワークショップが始まる前に期待していたことは何ですか?

今井:僕は中学校に入る前から「自分がこれからどんなことをして生きたいのか?」みたいなことを何となく、ふわっと考えていて。でも、考えてもよくわからないままでした。そこでワークショップに参加して、自分ってどんな人なのかなっていうところを理解できたらいいなと思って参加しました。

大嶋:参加する前は、Uniculの<Queque>がどんなものなのかよくわからなかったんです。 教えてくれる講師の方が目の前にいて、じっとお話を聞いているスタイルの授業なのかな、と勝手な印象がありました。でも参加したら、そこは全然違っていました。みんなで一緒に話して考えて、意見を言って、話し合いが進んでいく。大学生や社会人の方の体験談も気軽に聞けるし、交流しながら勉強するという印象に変わりました。

和田:私はLDT開講前のアンケートで<Queque>を初めて知ったのですが、「人生について考える」という感じの内容を見て「重そうなテーマだな、難しいかも」と感じていました。だけど実際にやってみたら、大嶋さんの感想と一緒で、授業に参加している友達や年上の方と話していくうちに「なんか楽しいな」って気持ちが湧いてきました。

Q3:ワークショップに参加した後、自分の中で変化を実感したことはなんですか?

今井:1回目のワークショップから途中の3回目くらいからですかね。自分を理解することに加えて、自分をもっと掘り下げて考えたいという気持ちが湧いてきました。こういう人生がいいな、こういう活動がしたいなっていう計画を立てていこうと前々から考えていたんですけど、逆に「これはあまりやりたくない、選びたくない」というような、これまでと逆方向からの視点を取り入れて、色々な面を含めて考えてちゃんと決めたいって思うように変わっていきました。

和田:参加前は「自分の夢はコレ!」と掲げている状態だったんですけど、そのために何をするか詳しいステップまでちゃんと考えようと、意識が少し変わったところがあります。具体的な要素を考える大切さがワークショップを通して実感できたことがよかったです。

大嶋:Uniculのファシリテーターのお話を聞いて、納得することがいくつかありました。過去にこんな困難を超えてきて、今はこんなことをしているんだよ。というような経緯を聞いて、「なるほど~そんなことを当時考えていたのか」と、勉強になりました。まだ経験していないことも、未来の自分に置き換えて考えられるきっかけになったんじゃないかなと思います。

Q4:受講中、他の生徒さんとどのような関わりがありましたか

今井:第3回の「冒険の宇宙」のときに、学年が1個上の先輩と同じ班になったんです。
今までは同学年の知り合いや、元々仲が良い先輩と話をすることはあっても、他学年で普段関わる場面がない先輩たちと対面で話せる機会はそんなになかった。先輩が学校生活の中で感じたことや知ったことを僕にも教えてくれました。それまでよく知らなかった人と話すようになって、人間関係のネットワークが拡がった気がします。

和田:第2回の「キャリアタイムマシン」で、今まで面識がなかった同学年の男の子と話しました。その子の話が個性的で面白かったことが今でも印象に残っています。
「仕事を仮想体験できたらいいよね」ってその子が話していて、面白そう!と思いました。AIが進化を続けて、未来の職業マップがどう変わるのか。人間が行う仕事はどうなっていくのか…という話題になった時のことです。人間は心を持っているから、心の関わりを大事にする場面は人間にしか難しいんじゃない?という意見が出た後、「未来を想像するとちょっと楽しいけど、でも、ちょっと怖いよね」って話をしたんです。
私では”仮想体験”なんて単語はまず出てこないので。自分にはないアイデアや考え方を、その子が共有してくれました。

大嶋:私は今井くんと少し似ているかも。
「無人島クエスト」でひとつ上の先輩と同じ班になって、その時、自分で考えた目標達成のステップを付箋に書いていたんですけど、その先輩から、進級する時のコース選びについてのアドバイスをもらいました。私の将来やりたいことのためには、ここでバカロレアを取得する必要があるんです。
バカロレアを取れなかった時はどうすればいいのか、先輩と話しました。先輩の意見を参考にすることで、私が持っている疑問についてさらに考えることができたし、新しく出てきた疑問もそこで共有できたので、すぐ解決しました。

和田さんも言っていたけど、自分で考えつかないアイデアが出てくるところが良かったですし、ひとつの課題をクリアするのに、どういった解決案を出せそうかをみんなと考えて話せたこともすごく良かったです。

\ さいごに / 2023年はどんな一年にしたいですか?

今井:今やるべき勉強や部活、やりたい趣味の活動などバランスを大事に行動力をつける!

和田:英検準一級の取得。将来の夢のために英会話スキルをもっと高めたい!

大嶋:留学するので語学を頑張る。留学先で日本文化を広めるイベントもやってみたい!

今井さん、大嶋さん、和田さん。たくさんの質問にも快くお答えいただき、本当にありがとうございました。

みなさんのやりたいこと、叶えたいこと。ご自分のペースを大事にしながら、楽しむことを忘れずに目標に挑戦していってほしいと思います。

インタビュー後記

今回のオンラインでのインタビューには、大宮国際中等教育学校にて実際にグループファシリテーターを担当したUniculメンバーの渡辺さんにも同席してもらい、ファシリテーターとして生徒さんを見守ってきた立場から見えてきたことを共有してもらいました。

―今回の生徒さん3名のお話を聞いて、いかがですか

渡辺:まず、こうして振り返りの感想を直接聞くことができて嬉しかったです!
相互理解が活発になるワークショップなので、ひとりの子の中で生まれた疑問に対して、 どう解決すればいいんだろうか?というような、自由な意見交換がなされている風景を実際に見てきました。

―自由に話せているから新しい疑問が生まれて展開が進む。そういった雰囲気が3名のお話の中に見受けられましたね。

渡辺:他の人がうまくいかない状況に遭っている時に、失敗の乗り越え方を共有していたり、学年を超えた交流が確かにありました。
ワークショップの参加対象者は2年生と3年生。3年生の方が知識があって、バカロレアを取得するために頑張ってきた経験もある。バカロレアを取れなかったケース、起こり得るリスクについて具体的に教えてもらえたりして、2年生は参考になっただろうなと思います。他者の意見を通して、より深く自分自身を知る機会になっていたらいいですね。

それぞれ一番印象に残っている回はあると思いますが、ワークショップの各回で学んだことが線と線でしっかり繋がって、より深く、統合的な学びとして活きている。今回のインタビューを聞いていて、そんな実感があります。
約3か月という短期間での成長ぶりは、本当に素晴らしかったです!私自身、とても刺激を受けました。

―渡辺さん、感想ありがとうございます。当日のファシリテーターもお疲れさまでした。

大宮国際中等教育学校では、2023年度も<Queque>のワークショップを実施させていただく予定です。今年度も楽しく充実した学びの時間を参加者の皆さんに届けられるよう、メンバー一同尽力したいと思います。
今回の取材協力について快諾いただいた先生方、ご関係の皆様、本当にありがとうございました。

(取材・執筆:佐々木/ファシリテーター:渡辺/編集:丸谷)